なぜバッハの曲はコンクールの課題曲になるのか
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藤沢市にある、ピアノ・英語リトミックの藤沢ピアノ音楽教室主宰の小野裕美です。
ピアノコンクールの予選会が、あちらこちらで始まっていますね。
たいていのピアノコンクールでは、バッハがかなりの確率で課題曲に出されます。
音大受験では、バッハは必須ですが、どうしてなのか、お分かりになりますか?
それは、音楽の礎を築き上げた人だからです。
モーツァルトもベートーヴェンも、ショパンもリストもラフマニノフも、皆みんな、バッハの作風を勉強したのです。
だから、バッハ以降の作曲家の曲を弾くためには、その大元になるバッハを学ばなければ、後世の作曲家の曲は理解はできないのです。
バッハが難しいと思う理由
これほどにまで、音楽の大切な基礎を作り上げたバッハ。
なのに、あまりにも多くの人が「バッハは難しい」と口を揃えて言いますよね。
勿論、確かに易しい曲ではありません。
でも、難しいと思ってしまうのは、バッハの曲を頭で理解していないからです。
バッハという人は、実に聡明で、一音の無駄もなく、音楽を作り上げてきました。
だから、それを解明すれ事が出来れば、「バッハが何を考えて曲を作ったのか」という事を理解することが出来るのです。
バッハが弾けるようにする為には、まずは苦手意識をなくすこと
人が難しいと感じるのはなぜか。
それは、「出来ないから」という事に原因があります。
人は、自分が出来ないことに対しては難しいと思い、そしてそれが苦手意識へとつながっていきます。
でも、ひとたび出来ることを経験すると、そこから出来る喜びを感じ、どんどん楽しくなります。
バッハの音楽は、まさにこれ。
知れば知るほど、理解すればするほど、本当にとても興味深い楽しい世界へと転じていく事が出来ます。
そのためには、バッハを楽しく・分かりやすく、ピアノのレッスンで教えてもらう必要があると感じています。
バッハが理解できない最大の理由とは?
私が生まれて初めて弾いたバッハの曲。
それは、アンナマグダレーナの曲集に入っている曲でした。
この曲集に入っている曲は、どの曲も非常に美しい旋律で、とても理解しやすい曲になっています。
でも、インベンションに入ると途端に多くの人は苦手意識を持ってしまいます。
それは、常に「テーマ」ばかりを追いかけるからではないでしょうか?
テーマだけを追って楽譜にマーカーしてみると実に多くの所にマーカーが付かないことに気が付くと思います。
これではやはり、曲の構造を理解することは出来ませんね。
苦手意識を抱え、バッハが上手に弾けないのも無理はありません。
シンフォニア第8番を使って一緒に楽曲分析してみよう
一見すると、バッハのシンフォニアの曲の中でも弾きやすそうに見える、シンフォニア第8番。
ところが、よ~く考察してみると、非常に興味深い作曲構造になっています。
ピアノコンクールの予選を通過するには、これをよく理解して演奏をすることが審査の分かれ道となります。
バッハの曲をピアノコンクールの課題曲に選定しているのは
✅コンテスタントが、しっかりとバッハの音楽を理解して演奏しているか
これを聞いて、その理解度と、その音楽の理解が演奏にしっかりと反映されているか、これを審査するためです。
このシンフォニア第8番で最も難しい個所と言えば、上の楽譜の7小節目から始まる第2部です。
ここでマーカーの色が分けられているのは、上のパートから順に「Aさん、Bさん、Cさん」と、誰がテーマを歌っているのかを区別して分かりやすくするためです。
上図で見るように、曲の構造自体は難しくありません。
ただ、この曲の構造が演奏の表現効果を示唆しているのです。
これを読み取ることが出来なければ、「楽譜を読んでいる・理解している」という事にはつながりません。
バッハの作品に限らず、他の作曲家においても、
「曲をどのように演奏したらよいのか」
という事は、9割以上は楽譜を正しく読み取ることで説明することが出来ます。
楽譜に書かれている、奥深くまでいかに読み取って演奏に反映させられるか。
これが、ピアノコンクールで予選に突破できるかどうかのカギです。
是非、動画をご参考になさって見て下さいね。
*こちらがシンフォニア第8番の第1回目の配信です。